大型図録本 世界陶磁全集 22 世界3 ヨーロッパ古陶磁器
古代?ギリシア・古代?ローマ・イギリス・ ドイツ・フランス・オランダ・イタリア
写真集 解説 原色カラー図版337点 単色図版203点 やきもの 陶芸 古陶磁 古美術 陶磁器 アンティーク 西洋骨董 主要窯印152点掲載
作品集 写真集 写真解説 論文 論考
座右宝刊行会 友部直 責任編集
小学館
1986年初版第1刷
約31x22.5x4cm
329ページ
カラー図版337点 モノクロ図版203点 窯印152点
函入 カバー付き上製本
※絶版
※月報付き 「陶磁史研究昨今(談話)三上次男」本巻執筆者紹介掲載
文化庁協賛 エーゲ海文明?の時代?から近代?に至るヨーロッパ陶磁の歴史が織り成す多様な世界を体系的にまとめ、
技術・様式の展開とともに文化交流のあとをたどる内容。
古代?ギリシア・古代?ローマ・イギリス・ ドイツ・フランス・オランダ・イタリア
エーゲ海に花開いた古代?文明?から、工業化を達成した近代?まで、ヨーロッパの陶磁は東西の技術・意匠を集約しながらその巨大な歴史を築きあげていった。
土器・陶器・磁器すべてにわたる多種多様な流れを詳細に紹介する。 集大成した決定版、大型写真集・大型図録本。
体系的な重厚な作りの陶磁書はこの昭和?末期~平成初期に隆盛を極め、
その部門における最高権威の専門家による執筆、写真、資料を含めて質量ともに最高峰のものとなり、
以降は書店の減少、インターネットの普及などにより制作されなくなりました。
ヨーロッパの陶磁四千年の歴史をたどる。
ギリシア陶器・マヨリカ・デルフト・マイセン・セーヴル・陶彫・タイル他
●原色カラー図版337点●単色図版203点
●ヨーロッパ諸国の主要な窯の、代?表的な窯印を選んで152点収載・地図・年表・文献を満載
●最高の執筆陣による精細な論文と解説
当代?の最高権威による論文・解説および関係資料を満載、
その幅広い魅力を総合的・体系的に展開した陶磁研究と鑑賞の基本書。
壺、鉢、水差、アンフォラ、皿、碗、水注、瓶、タイル、ティーポット、カップ、テュリーン、飾壺、絵皿、フィギュリン人形、ほか多数収録、全作品に詳細な解説を付したもの。
ヨーロッパ古美術・古陶・骨董品等愛好家必携の大変貴重な資料本です。
【全集全体の紹介文】
陶磁の歴史は芸術の面からも、生活のレベルでも人類史と不可分のものです。本全集は世界の陶磁を網羅し、地域別かつ時代?別に編集しました。
各巻、カラーおよびモノクロ図版に、専門家による解説、文献目録などをそえた構成。
美術館・博物館所蔵のものに、近年発掘された新中国の古陶磁などを加え、また諸窯の遺品も収録するなど、世界陶磁の決定版全集です。
一つ一つの陶磁に「人類の文化史」を語らせた
今後四半世紀?は、実現不可能というべき決定版
世界的に最新資料を集大成した最大規模の決定全集
一万余点の写真資料を駆使、原色図版を豊富に収録
最新発掘の陶片なども、美しいカラーで数多く収録
日本陶磁では特に茶陶を重視、名品を各巻に収めた
各巻冒頭に陶磁文化史を載せ、体系的理解を深めた
【目次】一部小見出し紹介
本文
ヨーロッパ陶磁生産の特質と技術思想
古代?地中海地方の陶芸
ビザンティン陶器
スペインの陶器
マヨリカ陶器
デルフト陶器
フランスのファイアンス
マイセンとドイツ、オーストリアの磁器
フランスの磁器
イギリスの陶磁器
シノワズリー様式の陶磁
ヨーロッパの陶彫
ヨーロッパのタイル
図版
原色図版・解説
本文挿入原色図版
クレタ、ミュケナイ、ギリシア、ローマ
ビザンティン、中世陶器、イスパノ・モレスク、マヨリカ
デルフト、ファイアンス
ヨーロッパの磁器(マイセン、セーヴルほか) 、タイル
ヨーロッパ陶磁の窯印
図版解説
主要文献目録
年表
英文本文目次
英文図版目録
《撮影・資料提供》
MOA美術館 根津美術館 北村美術館 藤田美術館 サントリーウイスキー博物館 富士美術館 アート光村 ウェッジウッド・ジャパン 尚水堂 高久良一 シモレン 吹田貿易 美宝社 友部直 中山典夫 西田宏子 オリオンブレス 前田正明? 森田義之 山口直 ワールド フォトサービス 湊典子 吉田光邦
アメリカ古典学研究所(アメリカ): アゴラ発掘 ヘラクレイオン考古学博物館 イスタンブール考古学博物館 バイエリッシュ国立博物館(ミュンヘン) ベナキ美術館(アテネ) 国立図書館(パリ) ケンブリッジ大学考古学・人類学博物館 キャッスル博物館(ノッティンガム) 市立博物館&美術館(ストーク・オン・トレント) キプロス博物館(ニコシア) ローゼンボー城(コペンハーゲン) ダービー美術館・アートギャラリー ダンバートン・オークスコレクション(ワシントンDC) フィッツウィリアム美術館(ケンブリッジ) ゲルマニッシュ国立博物館(ニュルンベルク) ハーグ市立美術館 ヘット・フレースハウス美術館(アントワープ) 歴史博物館(ロッテルダム) ケラメイコス博物館(アテネ) 工芸博物館(ケルン) オスロ工業博物館 ヴィルツブルク大学マルティン・フォン・ヴァグナー博物館 クロニー美術館(パリ) シャルトル修道院美術館(ドゥエ) パリ装飾美術館 ルーアン美術館 ジャックマール=アンドレ美術館(パリ) ベルネ市立美術館(フランス)
リモージュ国立アドリアン=デュブシェ美術館 セーヴル国立陶器美術館 ブリュッセル王立美術館 マドリード国立考古学博物館 パドヴァ市立博物館 トリノ市立博物館 ボローニャ中世市立博物館 ヴェネツィアコレル美術館 ナポリ・カポディモンテ美術館 ファエンツァ国際陶磁器美術館 パレルモ国立考古学博物館 フィレンツェ・バルジェッロ美術館 ミラノ・スカラ座劇場美術館 ロッテルダム・ボイマンス=ヴァン・ベイニンゲン美術館 フランクフルト・美術工芸博物館 ハンブルク・美術と工芸博物館 アテネ国立考古学博物館 アムステルダム・ライクスミュージアム ダービー王立クラウン・ダービー陶磁器博物館 ミュンヘン・シュロス・ルストハイム ミュンヘン・シュロス・ニンフェンブルク チューリッヒ・スイス国立博物館 ミュンヘン・古代?美術コレクション パリ・フランス国立博物館 カッセル州立美術館 デルフト・プリンセンホフ美術館 オッテルロ・タイル美術館 ロンドン・大英博物館 ニューヨーク・ブルックリン美術館 ベッドフォード・セシル・ヒギンズ美術館 ニューヨーク・ヒスパニック・ソサイエティ美術館
ニューヨーク・メトロポリタン美術館 ロンドン・ロンドン美術館 ロンドン・ウォレスコレクション バチカン美術館 ロンドン・ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館 バルラストン・ウェッジウッド博物館 シュトゥットガルト・ヴュルテンベルク州立博物館 エージェント・フォト アトン・インターナショナル C.N.B.&C. フォトフラッシュ フォト・ルフィン レイランド・ロス・リミテッド ペディチーニ・スナック フォト・ブロゾ フォト・エレベ ロイヤル・クラウン・ダービー・ポーセリン社 スタジオ・マルセル ケイシリア・H・メスナー ジョルジョ・ニマタラ ヨアヒム・ヒルトマン ヨハン・ウィルスバーガー ジョセフ・P・ジオロ マルティン・コッポラ オリバー・R・インペイ フィリップ・デ・ゴベール ルネ・ローラン ライナー・リュケルト
【執筆者紹介】(月報に掲載)
吉田光邦 京都大学名誉教授。技術文明?史選考。『中国科学技術史論集』『工芸と文明?』『やきもの』 『錬金術』『海を渡った日本のやきもの』(共編)
中山典夫 筑波大学助教授。ギリシア・ローマ美術史専攻。「白地レキュトスに描かれた墓標の研究」他。
木戸雅子 東京芸術大学他非常勤講師。ビザンティン美術史専攻。「ヴェルイーナ墳墓の発掘とその出土品について」他。
前田正明? 武蔵野美術大学教授。ギリシア美術史・西洋陶芸史専攻。『西洋陶磁物語』『美術解剖図譜』(共訳)他。
森田義之 茨城大学助教授。イタリア美術史専攻。『ミケランジェロ・ヴァティカン壁画』『ジョルジョーネ/ティツィアーノ』(共著)他。
西田宏子 根津美術館学芸課長。陶磁史専攻。 「メリー二世の陶磁器蒐集にみる日本磁器」『古伊万里』『柿右衛門』『韓国やきもの案内』他。
前川誠郎 国立西洋美術館長。西洋美術史専攻。 『デューラー』『ファン・エイク』『Zwei Durer Probleme』他。
友部直 共立女子大学文芸学部長・教授。西洋古代?美術史専攻。本巻責任編集者。『美術の歩み』(翻訳)『トゥト・アンク・アメンⅡ』他。
湊典子 共立女子大学講師。西洋美術史専攻。 「松方幸次郎とその美術館構想について」『美術の中の裸婦』(共著)他。
オリヴァー・R・イムピー (Oliver R. Impey) アシュモレアン博物館学芸員。工芸美術史専攻。 『Chinoisrie The Origins of Museums』(共編
【各作品解説一部紹介】寸法記載あり、ここでは略
嘴形注口付水差(カマレス様式) クレタ (前1900~前1700年頃) ギリシア、クレタ島ファイストス出土
Archaeological Museum, Heraklion
Spouted jug. Painted pottery. Kamares style. From the Palace of Phaistos, Crete, Greece. ca. 1900-1700 В.С.
クレタ文化の陶芸は、前1900-1700年に最初の隆盛期を迎えた。この時代?の陶器は、クレタ島のほぼ中央にそびえるイダ山の南麓深くに穿たれた洞穴カマレスの中から多くの遺品が出土したことから、「カマレス様式」と呼ばれる。ファイストスの宮殿跡から完品に近い状態で発見された図の水差は、その代?表的な例である。胴部は弾力をもって球形にふくらみ、その上に、小さな嘴形の注口をもつ短い頸部が載る。両者は、ゆるやかな曲線を描 <把手によってつながれている。この器形に、黒地の上に白や赤褐色など、鮮やかな色を使った渦巻や楕円を主とした抽象文の大胆なデザインが、見事に調和している。
動物文クラテル(ミュケナイ様式) ミュケナイ (前1300年頃) キプロス出土
Cyprus Museum, Nicosia
Krater with animals decoration. Painted pottery. Mycenaean style. From Cyprus. ca. 1300 B.C.
前二千年紀の初め頃、バルカン半島を南下し、ギリシア本土に定住したインド・ヨーロッパ語族のアカイヤ人 (ミュケナイ人)は、先進クレタの陶器を模倣することから、彼らの陶芸を始めた。しかし前十五世紀?頃から、 ギリシア本土の陶工たちは、しだいにクレタの影響から脱し、ミュケナイ文化独自の陶器を作り出すようになった。そして、たとえばここに図示した例のように、ふくらんだ胴と広い口をもち、二個の把手が垂直に付く壷のような新しい器形も生まれ、またその器面には、野牛, 馬など陸上の動物、さらには人間といった、クレタの陶器装飾にはけっしてみられなかったモティーフが登場する。これらギリシア本土産の陶器は、前十四世紀?にはキプロスを始め、地中海域の各地方に大量に輸出されていた。
神話図アンフォラ (アッティカ赤絵式) 「クレオフラデスの画家」画ギリシア (前500~前490年) イタリア、ヴルチ出土
Staatliche Antikensammlungen, Munchen
Amphora with "Dionysos and maenads", painted by the Kleophrades Painter. Painted pottery. Attic Red-figure style. From Vulci, Italy. ca. 500-490 В.С.
底に向かって尖ったこの器は、立てて置くときは別製の支えを必要とした。小さい口は、コルクで栓をすることができた。このような形態のアンフォラは、葡萄酒を詰め、肩に担いで運ぶためのものであった。尖った底部の鈕は、内容物を注ぎ出すときに三番目の把手としての機能を果たしたのである。この器形のアンフォラは、葡萄酒のほかにも水やオリーヴ油、さらには魚や穀物の運搬および貯蔵用として大量に作られた。それらはほとんどが素焼の粗製品であり、この作品のように、器面が絵画で見事に飾られている例は非常に稀である。胴部の装飾画の主題は、酒樽というこの器の用途にふさわしく、 酒神ディオニュソスとその従者たちである。右手にカンタロス(祭儀用酒盃)、左手に葡萄の枝をもつ酒神の周囲を、馬の耳と尾をもつ怪物シレノス、狂乱の信女マイナデスが取りかこんでいる。古代?ギリシアでは、酒に酔うことは神に近づくことと考えられていた。頸部には、槍投げ、円盤投げの練習に励む若者たちが描かれている。
色絵騎馬人物文皿 (マヨリカ) イタリア、フィレンツェ (1425-50年頃)
The Metropolitan Museum of Art, New York
Basin with a boy on horseback and leaves decoration in green and brown. Maiolica. Florence, Italy. ca. 1425-50.
十五世紀?前半のフィレンツェによくみられる所謂「緑彩属」 (famiglia verde)の鉢。これは線的・平面的なゴシック的な装飾タイプで、用いているのは「アルカイック様式」以来の伝統的な二色(緑と褐色-紫)だが、 褐色-紫の線描の上から緑を薄くかけ、この淡い緑色が主調になっている。この平底鉢では、見込みに馬に乗る騎士風あるいは狩人風の少年が表わされ、まわりを百合の花が幻想的装飾的に埋め尽くしている(ちなみに百合の花はフィレンツェ市のシンボル・マークである)。口縁にも簡略化された百合の花があしらわれている。中心のモティーフを除けば図162とほとんど同じ図柄で、おそらく同じ作者の手になるものだろう。
色絵グロテスク文皿 (マヨリカ) イタリア、カファジョーロ (1515年頃)
Victoria and Albert Museum, London
Dish with "Leda and the Swan" and grotesques decoration in polychrome. Maiolica. Cafaggiolo, Italy. ca. 1515.
十六世紀?初めにカファジョーロで作られた「優美様式」 (stile bello)による代?表的なグロテスク文の「飾り皿」の一つである。中央の円枠の中にレダと白鳥に変じたゼウスの愛の場面を小さく表わし、その上には愛の女神ヴィーナス、そして器面いっぱいにサテュロスやプットー、ドラゴン、鳥、武具、アカンサスなどをシンメトリックにぎっしりと描き込んでいる。これらのモティーフが愛にまつわるさまざまな教訓的寓意を含んでいることは疑いない。流れるような躍動感にあふれるデッサンは秀抜で、図49のジョヴァンニ・マリーアのスタイルにもきわめて近い (G. リヴェラーニはヤコボ・ファットリーニの作とみなしている)。藍色の地に赤のアクセントが鮮やかで、それに黄や黄緑、ニュアンスに富む膚色が明?快な調和を作り出している。
色絵ラファエレスク文皿 (マヨリカ) 0.フォンターナ工房作
イタリア、ウルビーノ (1565-70年頃) Victoria and Albert Museum, London
Oval dish with "The Gathering of Manna" and Raphaelesque decoration in polychrome, made by Orazio Fontana workshop. Maiolica. Urbino, Italy. ca. 1565-70. 長径68.0cm
ベリパーリオの孫であるオラツィオ・フォンターナの工房が、ウルビーノ公のために制作したラファエレスク文による大型食卓セットの一つである。パロック的ともいえる格円の器面をレリーフ状の緑取装飾で分割し、真ん中のメダイヨンには小さな説話場面 (マナの拾集)を表わす。フォンターナ工房によって一躍広まったラファエレスク文(ウルビーノ・グロテスク文)は、白地に多彩でサテュロスやプットー、空想的な鳥獣などの異教的モティーフを奇想豊かにちりばめたマニエリスム的な装飾スタイルで、その繊細で流暢なデッサンには、イタリア的な名人芸の感覚があふれている。色調も、白地を大きく生かし、彩度の高いオレンジを基調色として淡青や黄緑を鮮やかに組み合わせて、明?るく華麗をきわめている。
スリップ装飾鳥文皿 R. シンプスン作 イギリス、スタッフォードシャー (十七世紀?末)
Victoria and Albert Museum, London
Dish with slip-trailed decoration of pelicans, known as Pelican dish, made by Ralph Simpson. Late 17th century.
十七世紀?後半から十八世紀?初頭にかけて、スタッフォードシャー北部のパーズレムでは、クリーム地に褐色濃淡のスリップで、素朴な文様をおきつけた大皿が製作された。この独特な様式をもつ皿は、おそらく装飾品としてはイギリス最初期に作られた製品である。見込みに描かれるモティーフは限られており、ここではその一つ、 ペリカンの親鳥が三羽の誰鳥に餌を与える、すなわち「慈愛」を表わす図像が選ばれている。周縁部は、下部に作者を示すラルフ・シンプスンの名のほか、六つの人物頭部と、五つの円文とを交互に配している。これはこの作者にしばしばみられるデザインで、この種の皿は、多くの場合、褐色濃淡の格子文で縁取られた。
色絵狩猟図皿(ファイアンス) フランス、ヌヴェール (十七世紀?中葉)
Victoria and Albert Museum, London
Dish with a hunting scene in polychrome. Faience. Nevers, France. Mid 17th century.
フランスのほぼ中央に位置するヌヴェールでは,1588 年、イタリア、アルビソーラのコンラード兄弟 (Con-rade) と同じくイタリア人の陶工ジュリオ・ガンビーニ (Giulio Gambini) によってファイアンス生産が始められた。当初はイタリア・マヨリカの影響の強いイストリアート(物語絵を描いたもの)などを生産していたが、 やがてバロック風の器形にシノワズリー文様を施した水注や瓶に特色を示し、1670年代?には他のフランス諸窯に先駆けて、ブル・ベルサン (bleu persan ペルシアの青) と呼ばれる独特な濃青地に白や淡色で文様を描く装飾法 (図211,212参照)を生み出し、広く人気を博した。図の大皿はフィレンツェのアントニオ・テンペスタの二枚の銅版画よりとられた狩猟図と稠密な花文様を描いた有名なもので、マンガン紫の輪郭線と背景の淡青色に特色がある。ヌヴェールでは現在も製陶が続けられている。
藍絵風景図陶板 F. v. フライトム画 オランダ、デルフト (1659年銘)
Rijksmuseum, Amsterdam
Plaque with landscape in blue, painted and marked by Frederik van Frijtom. Delftware. Delft, Netherlands. Dated 1659.
十七世紀?に入ってオランダのタイルは著しい発展をみた。ここではタイルは単に床面や腰壁、マントルピースの装飾にとどまらず、数十枚の方形タイルを組み合わせて描いた大きなタイル絵や一枚の陶板に描いた陶画という芸術性の高い作品が制作された。十七世紀?後半に活躍したフレデリック・ファン・フライトムはファイアンスの陶画家としてもっとも傑出し、ここに掲げたようなすぐれた作品を残した。彼の陶画はオランダの運河のある自然をブルーの濃淡を用いて描き、自然の大気を陶画に再現した。画面の右前に倒れた木に彼の署名と年号が記されている。
色絵花鳥文壷(磁器) ドイツ、マイセン (1725年頃)
Victoria and Albert Museum, London
Vase with birds and flowers decoration in polychrome. Porcelain. Meissen, Germany. ca. 1725.
マイセン磁器製作所では、1710年の磁器完成後約十年を経て、ようやく中国の色絵磁器を模倣することに成功した。この頃の磁器の絵付には中国風もしくは日本風と呼ばれ、器形や装飾に東洋磁器を真似たものが多い。ここに掲げた大きな蓋付瓶もその一つで、これは清?朝の粉彩牡丹文の壷を写したものである。これらの大壷は当時のヨーロッパの宮殿内の暖炉の両側や部屋の隅のテーブルに置かれていたことから、別名を「宮殿用の壷」とも呼ばれていた。1725年から30年代?にかけてマイセンの色絵のモティーフは東洋風のいわゆる「インドの花」様式が盛んになる。その見事な絵付はまるで東洋の磁器とみまがうほど。
色絵風景人物図瓶(磁器) J. G. ヘロルト画 ドイツ、マイセン (1726年銘)
Porzellan-Sammlung, Dresden
Vase with Chinese figures decoration in polychrome and gilt, painted and marked by Johann Gregorius Horoldt. Porcelain. Meissen, Germany. Dated 1726.
初期マイセン窯の絵師ヘロルトの絵付の広口瓶である。彼は1720年マイセン磁器製作所に迎えられ、後に同所の美術総監となってマイセン窯の初期の黄金時代?を築いた。青地に金彩、瓶の胴部に中国風の絵を描いたこの広口版には裏面に王立マイセン磁器製作所の初期の窯印であるAR (Augustus Rex のイニシアル) と1726年8月 17日、マイセン、J. G. ヘロルトの署名がみられる。もともと細密画家であったヘロルトの初期の作品は、ほとんどが東洋風のモティーフのものである。
色絵神話人物・白鳥装飾テュリーン (磁器)
J. J. ケンドラー作 ドイツ、マイセン (1738年頃)
Meisener Porzellan-Sammlung, Schlos Lustheim, Munchen
Tureen with figural and swans decoration in high relief, in polychrome and gilt, modelled by Johann Joahim Kandler. Porcelain. Meissen, Germany, ca. 1738.
ケンドラーは1735年以後多彩色の小彫像のほかに有名な「白鳥の食器 Swan service」1200点を制作した。このテュリーン(蓋付のスープ入)はその一点。この有名なディナー・セットはアウグスト強王の宰相で、王に劣らぬ磁器愛好家であったブリュール伯夫妻のために、1737年から41年の約五年の歳月を費やして制作された。これは器のすべてに白鳥を浮彫にし、これに金彩ならびに多彩色で装飾した豪奢なディナー・セットで、マイセン磁器の傑作とされている。ケンドラーはこのあと、ロシアのスルコヴスキー公からの注文の食器セットにも白鳥の浮彫を飾った。
緑地色絵花文瓶(軟質磁器) フランス、セーヴル (1760年頃) Musee du Louvre, Paris Covered vase with floral decoration in polychrome and gilt. Soft-paste porcelain. Sevres, France. ca. 1760.
朝顔形に広がった器は、肩から口部へまた同じような曲線を描いてすぼまり、鐘のような形の蓋が付く。総体に輪花状となり、鍋の部分には金彩が施されてその形を強調している。胴と蓋には、白い窓を残し、その中心には各種の花を束にして描き、その左右には花枝を瓔珞風に垂れ下げて表わしている。全体に緑を地色として、ここに金で花綵文を描き、鈕には花をいくつかまとめた貼花を用いている。高い脚部も、同じような形状に作られ、 台部は大きく開いて安定した姿をみせる。1760年頃の作品である。この器は、当時の王立工場の工場長の名を付けて、「ポアローの霊 (vase Boileau)」と称されている。
青地貼付神話図査 J. ターナー作 イギリス、スタッフォードシャー (1780年頃)
The British Museum, London
Vase with "Diana" in white relief on blue ground, made by John Turner. Stoneware known as Jasper ware. Staffordshire, England, ca. 1780.
ジャスパーウェアは、ウェッジウッドによって1774年に完成された装飾用の無種炻器である。本図に明?らかなように、作者J、ターナーは、ウェッジウッドに多くを学んだ、同時代?、同地域の優れた陶工であった。この端正な双耳の壷の地色には、ジャスパークェアではもっとも一般的なブルーが用いられている。ただし、ウェッジウッドのそれより幾分濃い。白い浮彫は、ギリシア、ローマの装飾モティーフと、牡鹿を駆る月の女神ディアナである。これらの製品が、当時一世を風靡したアダム兄弟のデザインになる新古典主義様式の室内に置かれるものであったことを考えるとき。器形、装飾モティーフ、限定された素地の色など、その由来と特徴はいっそう明?らかになる。
ほか
【窯印】 152点
ここでは、ヨーロッパ諸国の主要な窯の、代?表的な窯印を選んで収載した。ヨーロッパ陶磁の窯印、およびそれに関する研究の詳細については、「主要文献目録」に掲げた関係文献を参照されたい。
<ドイツ・オーストリア・スイス>
マイセン (マルコリーニ時代? 1774-1834年) マイセン (1763-74年頃) マイセン (1723年頃~) マイセン (アウグスト二世のモノグラム) フィルステンベルク ニュンフェンベルク (1754年頃~) ヘヒスト (1762-96年) フランケンタール (1762年頃~) マイセン (1724年~) ウィーン (1744年頃~) ケルスターバッハ (1789-1802年) ベルリン ベルリン (1765年頃~) ベルリン (ゴツコウスキー工場 1761-63年) ベルリン (ウェゲリー工場) リンバッハ (1772年頃~) フルダ (1780年~) アンスバッハ (1758年~) カッセル (1766~88年) ルートヴィッヒスブルク (1758年~) ブラウンシュヴァイク (1710-49年) ドレスデン (1708-84年) バーゲン・バーゲン (1770-78年) オッフェンバッハ (1739年~) クロスター・ファイルスドルフ (1760~97年) ヴェルプスト レンツブルク キュネルスベルク モスバッハ (1806年~) ニヨン (1780-1860年頃) チューリッヒ (1763-1897年) クロイセン (十六世紀?~) ニュルンベルク (1750年~) バイロイト (1728~44年)
<フランス>
マルセイユ (LVペラン工場 1740-95年) ストラスブール (P.アノン 1762 ~81年) ルーアン (M.アバケーヌ) ストラスブール(P.アノン 1740 ~60年) ムスティエ (1783-1852年) サン・ポルシェール (1525~60年) セーヴル (ナポレオン三時代?) セーヴル (1845-48年) セーヴル (1824-28年) セーヴル (1778年) セーヴル (1753年) ヴァンセンヌ (1771-98年頃) サン・タマンレ・ゾー (1718-1882年) アプレ アプレ (1832-78年) ニデルヴィエ (1770-93年) オルレアン メヌシー ソー(1775年頃~) パリ(1782年~) パリ(1771-1840年頃) リモージュ (1771年~) アラス(1770-50年) サンスニー (1775-93年) サンスニー (1733年~) シャンティーイ (1725~1800年) サン・クルー エトワール (1776年)
<イタリア>
ノーヴェ (1781年~) ドッチア (1735年~) ヴェネツィア (コッツィ工場 1764-1812年頃) ヴェネツィア (ヴェッツィ工場 1719-1727年頃) フィレンツェ (ノディナ磁器) カステルドゥランチ (N.ペリパリオ) トリノ (1725年頃) ナポリ (1771年~) ミラノ (クレリチ工場) カポディモンテ ヴィノーボ モンテルーポ (ジロラモ)
<オランダ・ベルギー>
デルフト (P.A.コックス) デルフト (「ギリシアのA」工場) デルフト (A.コックス) デルフト (S.Vエインホールン) デルフト (LV.エインホールン) デルフト (「斧」工場) デルフト (「三つの鐘」工場) デルフト (「薔薇」工場) ローゼンブルク (1885年~) デルフト (「磁器の皿」工場) トゥルネ (1756~96年) トゥルネ(1751-96年) アムステル (1784~1820年) デルフト (「若いムーア人の頭」工場ホッペステイン) ブリュッセル (1786-90年) ウェースプ (1759~71年) ハーグ (1776~90年頃)
<スペイン・ポルトガル>
アヴェイロ(1785年頃) ヴィアンナ・ド・カステルロ(1774年~) アルコラ (1784年~) プエン・レティーロ ラト (1767年~)
<北欧・東欧・ソビエト連邦>
マリーベルク ゼルヴェスボルク (1773-93年) ヘレヴュー (1752-72年頃) レールストランド (1725年~) レヴァル (1775-92年) ペテルスブルク (1796-1801年) ペテルスブルク (1762~96年) ブエン・レティーロ(1760~1804年) ピング・アンド・グレンダール コペンハーゲン (1775年~) ホリシュ (1743~1826年) モスクワ (十九世紀?初) ギュスタフスベルク (1786-97年)
<イギリス・アイルランド>
ダービー (1750-56年頃) ダービー チェルシー・ダービー (1770-84年) チェルシー (1750年頃~) チェルシー (1750年頃) チェルシー (1745-50年) ボウ (1747年頃) ボウ (1762-76年頃) ダービー (1850~70年) ダービー (1820-40年頃) ダービー (1795年頃) ウースター ウースター (1760~75年頃) ウースター (1760~70年頃) ウースター (1755~75年頃) ウースター ウースター (1755-83年) ピンクストン (1796-93年頃) ブリストル ブリストル プリマス コーリー コーリー (1772-95年頃) コールポート (1861-75年頃) コールポート (1810~25年頃) コールポート (1810~25年頃) スワンジー ナントガル (1813-22年頃) ロッキンガム (1826-30年頃) ウェッジウッド ニュー・ホール (1781~1835年頃) ロントン・ホール (1749~60年頃) ダブンポート グラスゴー (1842~1928年) ポツダム ダブリン スポウド(1805?33年頃) ミントン (1822-36年頃) メイスン ミントン (1800~30年頃) ターナー (1784年~)
★状態★
月報付き。(経年並ヤケあり)
1986年のとても古い本です。
函入、函は経年ヤケしみ、背の帯のあった部分の色が少し薄くなっています。
カバー付きの外観は経年並、天小口経年ヤケしみあり。
表裏見開きの無地ページ全体に経年しみが目立ちます。
本文カラー図版数ページ余白部に全体的なしみあり。
他は経年並ヤケしみがそれなりにありますが、目立った書込み・線引無し、
カラー写真図版良好、問題なくお読みいただけると思います。(見落としはご容赦ください)